書籍「破天荒フェニックス」に学ぶ再生の成功要因

2019年01月24日 / 最終更新日 : 2019年01月26日

中小企業診断士の山田盛史です。

今回は書評です。前々から読みたいと思っていたのですが、なかなか読めずにいた「破天荒フェニックス」を読みました。
Amazonで200件近いカスタマーレビューがあり、そのほとんどが5つ星評価という高評価となっている話題の作品です。


どんな話なのか?

2008年2月、当時売上20億、借入14億、営業赤字、実態債務超過でだれもが倒産確実と目されていたオンデーズを30歳の田中社長が買取り再生させていくとう実話を元にしたエンターテイメント小説です。

私もちょうど同じ位の決算状況の会社の再生案件にたずさわったことがあり、その時のことも思い出しながら引き込まれて読みふけり500ページ近い本書ですが1日で読んでしまいました。

社長就任初月に1000万のキャッシュショートを乗り切り、その後も数億円のキャッシュショートの危機を脱するなど何度も倒産しかける事態が発生しては首の皮一枚で乗り切り見事に再生を果たします。

その過程は凄まじく、幹部社員の裏切りや社運をかけた新規店舗の失敗など多くの苦難もありましたがスポンサー企業や当社を支える社員の方々の奮闘とともに再生を果たしていきます。


破天荒フェニックスに学ぶ再生の成功要因

再生は可能性のあるもののなかから費用対効果の高いものを確実にやりぬく強い意思が必要であると思います。また自社のみではなく利害関係者の協力度合いや再生期間中の業況などにも左右されるものです。

本書を通して「再生とは」「仲間とは」「銀行とは」、、改めて色々なことを考えさせられ勉強になりました。
様々な成功要因がある本書の再生ですが、他の企業の再生でも共通するポイントは以下の要因であると思います。

1.優秀なCFOと社員の存在

田中社長は、意志が強く、行動力があり、人を引きつける魅力がある方であるというのが本書から伝わってきました。
しかし、田中社長は財務に疎いと本書には書かれています。それを支えるのがCFOの奥野氏の存在です。
奥野氏は資金繰りや熾烈な金融機関交渉など財務面を一手に担い、田中社長は事業面の再生に専念しています。
事業と財務は車の両輪であり、それらをしっかりと診れる存在は不可欠です。
さらに車体を動かしていく燃料が必要で、燃料がなければ車は前に進めません。
その燃料が再生に向けてともに奮闘する社員の方々です。
田中社長も「人が大切である」「人の再生を行っている」ということを述べていますが、施策を遂行していく社員の方々のエネルギーが強ければ強い程、車はより早いスピードを上げて走れるし、より遠くまでいくことができます。

事業(戦略)、財務、オペレーションの3つがうまく機能して再生を加速できたという事がまずはとても重要な要因であると思います。

2.現場主義

田中社長は就任後、全国60ある店舗をすべて回って現場を見ています。
そして現場の社員との飲み会を通して、現場の実態や社員の本音を的確に把握し然るべき対策を打っています。
実際に頭ではわかっているつもりでも現場に行かなければ分からないことは数多くあります。
また、経営幹部と現場が考えている事、認識している課題がまったく異なっているという事は再生の現場ではよくあることです。
60ある店舗をすべて巡回するのはとても大変ですが、まず現場の状態をしっかりと把握することはとても大切なことです。

3.目標の細分化

田中社長は各店舗に対して月に100万円、今より売上をあげるという目標ではなく、1日に3万円売ろうという形で時間ごとに小さく目標を設定して皆んなが行動できるように指揮を取っています。
このように行動目標が現場の一人ひとりが理解できるまで落とし込むことで現場と本社の一体感の醸成と行動を促したということも重要な要因であると思います。

どんなに困難で絶望的な状況にあっても決して諦めず運命の糸をたぐり寄せる、その姿勢や行動には多くの感動と勇気を与えられます。
本書は再生に関わる方はもちろん、すべての経営者にとって多くの示唆を与えるものだと思います。
近々オンデーズのメガネを買いに行こうと思います。


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