ロジカルシンキングは万能ツールではない
2019年04月16日 / 最終更新日 : 2019年04月16日こんにちは、中小企業診断士の山田盛史です。
先日、メタップスの創業者である佐藤航陽社長の著書「未来に先回りする思考法」を読みました。
この本は2015年に出版された本で、なぜこのタイミングで読んだのかというとYoutubeでたまたま佐藤社長のインタビューや対談の動画を見たことがきっかけです。
インタビューや対談での佐藤社長の発言や内容を聞いて、若いのに知識が豊富で洞察力がある方だなという印象を受けたので、佐藤社長の経歴等と調べたところ、この本にたどり着いたという訳です。
「未来に先回りする思考法」とは
この本はタイトルの通り、未来を先回りする思考をするためにはどのようなことに留意すればよいかといった事が書かれています。
また、所々に佐藤社長ご自身の「今後はこのようになるだろう」という考察も述べられています。
2015年に出版され、私は2019年に本を読んだ訳ですが、佐藤社長の予測のとおりになっているなと思う部分が多く、その洞察力の深さを改めて感じました。
ロジカルシンキングには弱点もある
この本の中で特に印象に残ったのが「ロジカルシンキングは弱点もある」という内容です。
本の内容を要約するとロジカルシンキングは他人を説得する際には有効であるが、物事の成否を見極めるには、それほど役に立たないということです。
物事の成否の見極めには役に立たないという理由としては、ロジカルシンキングで構築するロジックは、当人が知っている情報の範囲に依存するということを挙げられています。
この内容は私も近い感覚を持っていて、とても納得した部分でもあります。
私は、中小企業様のご支援として事業計画書の作成支援をすることも多いのですが、3C分析や5フォース、SWOT分析などのフレームワークを使いながら論理的な計画になることを意識して作成支援をしています。
事業計画書の作成は銀行に見せるため、投資家、VCに見せるため、補助金申請のためと様々な目的がありますが、共通するのは他人に見せて理解してもらうことを第一に置いているという点です。もちろん実現可能性も考慮した上でです。
このような場面では、はやりロジカルシンキングは有効であると思います。
しかし、その一方で事業計画書の作成支援以外で、事業について経営者の方と話をしたり、一緒に考えたりする場合には、既存のフレームワークに当てはめて整理したりすることなどはあまりしません。(もちろんケースバイケースでまったくない訳ではありませんが)
つまり、普段(経営者自身で)事業を検討する際にはロジカルシンキングを意識して行うことは少なく、あまり緻密な分析をしているというケースは実はそう多くはありません。
実際の事業においては、当初はそう考えていなかったけれど、何となくやっていくうちに新しいことが分かってきて、結果として最適な形に落ち着いていく。そして、結果として後付け的にロジックが形成されるというケースが多いものです。
そう考えていくと、昨今、環境の変化が激しく事業に影響を与える要因も無数に存在するなかで事前に完璧なロジックを組むという事自体、無理があります。
そして時間を掛けて分析したり、事業を考えたりすることに、もはや意味はないのかもしれません。
それより、事業をやる前から完璧なロジックを組む事自体に限界があるという前提を持ち、まずは行動してみて軌道修正をいち早く行い最適化させるという考え方が現代の経営にとって合理的なのだろうと思います。
ロジカルシンキングは万能ツールと捉えずに使わけることが重要
ロジカルシンキングを学ぶ人は多いし、他社とのコミュニケーションにおいてはとても有効に機能するツールであることは間違いありません。その意味においてロジカルシンキングは重要で決して否定するつもりはありません。
重要なのは、ロジカルシンキングが有効に機能する場面と、あまり有効に機能しない場面を理解して使い分けるという事に尽きると思います。やはりロジカルシンキングも1つのツールなので上手く使い分けていきたいものです。
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