値上げすべき企業とそうでない企業
2018年11月22日 / 最終更新日 : 2019年01月27日こんにちは、中小企業診断士の山田盛史です。
今回のテーマは「値上げ」です。
値上げすべき企業とそうでない企業について実例を交えながら考察します。
値決めの重要性
まず値決めの重要性について、京セラの創業者、稲盛和夫氏のフィロソフィの中に
「値決めは経営」という言葉があります。
つまり経営の死命を制するのは値決めであるという考えで、値決めは経営そのものであると言っても過言ではないかもしれません。
薄利多売の戦略でいくか、それとも多利少売の戦略でいくのか。。
それを決めるのは値決めになります。
値決めが重要なのは紛れもない事実ですが、その一方で値決めはとても悩ましい問題であることも事実です。
現在の商品サービスの価格を上げるのか、それとも下げるのか?
値上げするとお客様が離反してしまう可能性があるため怖くてできない。
かといって最低賃金は年々上昇し、為替や天候の影響で材料高にもなっている昨今、値上げしなければ利幅がとれない、という現実もあります。
値上げをして業績を伸ばした企業・業績が悪化した企業
値上げをして業績が悪化した実例として鳥貴族があげられます。
焼き鳥チェーンの鳥貴族が一律280円から298円に値上げをしたことで客数が落ち込んだというものです。
同社は全品280円均一という料金体系が好評であり成長を遂げた企業であることは言うまでもありません。
逆に値上げをして業績を伸ばした企業としてリンガーハットがあります。
リンガーハットは、天候不順による国産野菜の高騰を理由に代表メニューである長崎ちゃんぽんを東日本エリアでは626円から637円に値上げしています。
ちなみに、リンガーハットは2009年から国産野菜へ全面的に切り替えを行い、消費者に対して安心・安全をアピールしています。
値上げの結果として、2019年2月期の決算見通しは売上、利益ともに前年比プラスを見込んでいます。
また、値上げを発表した2018年8月3日の株価は前日比+68円と大きく上昇しています。
つまり、値上げによって業績向上が期待できると市場が判断したという事であり値上げによって業績を伸ばしたと言えます。
両企業の実例から見えてくるのは顧客が自社の商品サービスのどこに魅力を感じているかによって値上げすべきか否かが決まってくるという事です。
鳥貴族の場合、顧客は一律280円という安価な価格で、じゃんぼ焼き鳥からドリンクまで楽しめるというコストパフォーマンスの良さに魅力を感じてお店に足を運んでいたのだと思います。
その状況下で値上げをしたことでコスパの魅力が薄れ顧客離れに繋がったのだと思います。
昨今、鳥貴族以外にも280円程の低価格でやっているチェーン店も増えているからなおさらです。
逆にリンガーハットの場合は単に価格の安さだけではなく、国産野菜を使用しているなどの安全安心の食の提供が顧客にとっての魅力になっています。
そのため価格が多少上がろうとも安全安心の食の提供という価値が損なわれることはないのです。
値上げすべきか否か、結局の所、その答えは顧客が自社の商品サービスの価格(安さ)に魅力を感じているのであれば値上げはすべきではない(慎重になるべき)といえます。
その場合は値上げではなく生産性向上等のコスト削減や効率化で利幅を確保することを検討した方が賢明だと思います。
逆に顧客が価格以外の点(品質や利便性)に魅力を感じている場合は値上げの検討の余地があると思います。
常に顧客の心理を理解しておくという事が非常に重要な要素だといえます。
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