正常収益力と実態バランスシート(その1:正常収益力)

2020年03月04日 / 最終更新日 : 2020年02月05日

中小企業診断士の山田盛史です。
今回は正常収益力と実態バランスシート(以下、実態BS)について書きます。
中小企業の経営者の皆様は聞いたこともない用語だと思います。



主に事業を立て直すための事業再生を行う場面や、事業譲渡・株式譲渡などのM&Aの際に正常収益力や実態BSという考え方が非常に重要になります。

昨今、中小企業のM&Aが増加しており、中小企業の経営者の皆様はM&Aについて触れる機会も増えてきていると思います。
そこで今回は2回に分けて正常収益力と実態BSを解説したいと思います。
1回目のテーマは正常収益力です。


正常収益力とは

まずは正常収益力とは何なのか。それは損益計算書をもとに本来の収益性、つまり稼ぐ力がどれくらいあるのかを把握することを言います。
損益計算書の数値から特別な項目や正常とは思われない項目を見つけて数値を修正していきます。

損益計算書を見れば稼ぐ力がどれくらいあるか分かるのではないかと思われるかもしれませんが、損益計算書の数値が必ずしも実態の収益性を表している訳ではありません。

例えば、中小企業の損益計算書には節税や社長の個人利用による費用が含まれていたりします。
具体的には以下のようなものがあります。

・役員生命保険の保険料
・個人利用や役員社宅の家賃、減価償却費
・個人利用の社用車、駐車場代

また、役員報酬の金額そのものが過大であるケースもあります。
役員報酬の金額を大きくして営業利益をマイナスにして節税を図っているようなケースです。

仮にM&Aをして役員が変わるケースを想定するとこれらの費用は無くなったり、適正水準に洗い替えされるため、金額を修正して正常の収益力を把握します。

また、イレギュラーな損益も除外する必要があります。
例えば、今期に数名の従業員が退職して退職金を払ったりするケースなどは通常発生しない費用がプラスされている訳ですから本来の収益性を図る際には除外して考えます。

このように損益計算書の数値をもとに各費用や売上の数値を本来の数値に修正して損益計算書を作り変えます。
次回は実態BSについて解説します。


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