需要の価格弾力性とは?価格変動が消費者行動に与える影響とビジネスへの活用方法

2025年11月05日 / 最終更新日 : 2025年10月17日

需要の価格弾力性(price elasticity of demand)は、製品の価格変動に対する需要の変化率を示す指標で、企業が適切な価格戦略を立てるうえで重要な役割を果たします。この価格弾力性を理解することで、消費者の価格に対する敏感度を測定し、売上や収益の最大化に向けた最適な価格設定が可能となります。本記事では、価格弾力性の基本的な概念とその計算方法、ビジネス戦略への活用方法について詳しく解説します。


1. 需要の価格弾力性とは?

需要の価格弾力性とは、製品やサービスの価格が変動した際に、その価格変動に対して需要がどの程度変動するかを測る指標です。需要の価格弾力性が高い(弾力的である)場合、価格が少し変わるだけで需要が大きく変動します。一方で、需要の価格弾力性が低い(非弾力的である)場合、価格変動が需要に与える影響は小さくなります。

需要の価格弾力性は、経済学の基本的な概念であり、消費者行動の理解に重要な役割を果たしています。特に企業が価格戦略を立てる際には、この弾力性を考慮することで、売上や利益の最大化を図ることが可能となります。


2. 需要の価格弾力性の計算方法

需要の価格弾力性を求めるには、以下の計算式を使用します。

価格弾力性の計算方法の中でも最も基礎的な計算方法で、需要の変化率を価格の変化率で割って計算します。

  • 価格弾力性需要変化率(%)/ 価格変化率(%)
  • 価格弾力性 = (需要の変化率) / (価格変化率) × (平均価格 / 平均数量)
  • 価格弾力性 = (需要の変化率 / 平均数量) / (価格変化率 / 平均価格

 

ここで「需要の変化率」は、商品の価格が変わったことによって需要がどのくらい変動したかを示し、「価格の変化率」は商品の価格がどの程度変動したかを示します。たとえば、価格が10%上昇したときに需要が20%減少した場合、価格弾力性は -2 となります。この「-2」という数値は、価格が1%変動すると需要が2%変動することを意味しています。

一般に、弾力性の数値が以下のような場合、次のように分類されます。

  • 弾力的な需要(弾力性 > 1)
    消費者は価格に敏感であり、価格が少し変動するだけで需要が大きく変動します。例えば贅沢品や代替可能な商品は、弾力的な需要を持つことが多いです。
  • 非弾力的な需要(弾力性 < 1)
    消費者は価格に鈍感であり、価格が変動しても需要の変化は小さいです。必需品や代替が難しい商品は非弾力的な需要を持つ傾向があります。
  • 単位弾力性(弾力性 = 1)
    価格の変動が需要に比例する場合です。例えば価格が10%増加すると需要も10%増加する状況です。



3. 価格弾力性の種類

価格弾力性には、主に以下の2つの種類があります。

  • 需要の価格弾力性
    消費者の需要が価格変動に対してどれだけ敏感に反応するかを示します。価格が高くなれば需要が減り、価格が低くなれば需要が増えるという一般的な法則に基づいています。
  • 供給の価格弾力性
    価格変動が企業の供給量にどれだけ影響を与えるかを示す指標です。一般に価格が上がれば供給が増え、価格が下がれば供給が減る傾向があります。



4. 価格弾力性に影響を与える要因

需要の価格弾力性は、製品や市場の特性によって異なります。以下は、価格弾力性に影響を与える主要な要因です。

  • 代替品の存在
    代替品が多い場合、消費者は価格に対して敏感になります。例えば、複数のブランドが存在する日用品や飲料などは、価格弾力性が高い傾向があります。
  • 商品の性質
    生活必需品は価格に対して非弾力的であることが多く、価格が変動しても需要が大きく変わることはありません。一方、贅沢品や嗜好品は弾力的であり、価格が高くなると需要が大きく減少する傾向があります。
  • 消費者の所得
    消費者の所得が高い場合、価格の変動に対する感度が低くなることがあります。高所得者層が対象の高価格商品は、価格弾力性が低くなる傾向があるのです。
  • 購買の緊急性
    緊急を要する商品やサービスは、価格に対して非弾力的です。例えば、医薬品や緊急の修理サービスなどは、価格にかかわらず需要が安定しています。



5. 価格弾力性を活用したビジネス戦略

企業が価格戦略を設計する際には、価格弾力性を考慮することが重要です。以下に、価格弾力性を利用したビジネス戦略の例を挙げます。

  • 弾力的な需要を持つ商品の価格調整
    弾力的な需要を持つ商品においては、価格を引き下げることで大きな需要増加が見込めます。価格を適切に設定し、販売数量を増やすことで収益増加を図ることができます。
  • 非弾力的な需要を持つ商品の高価格設定
    非弾力的な商品については、価格を引き上げることで収益を増やす戦略が有効です。特に必需品や、競合が少ない市場においては価格を上げても需要が大きく変動しないため、利益率を向上させることが可能です。
  • プロモーションや割引の活用
    価格弾力性が高い商品には、プロモーションや割引キャンペーンを行うことで一時的な需要を増加させることができます。価格を一時的に下げることで需要を喚起し、販売数量を増加させる戦略が有効です。



6. 価格弾力性の限界と課題

価格弾力性は企業にとって重要な指標ですが、価格設定における全ての要素を説明するものではありません。価格弾力性を理解しても、消費者の価値観やライフスタイル、社会的な流行などが影響を与える場合も多いため、他のマーケティング要素と組み合わせることが必要です。

例えば、ブランドイメージや品質が消費者の選択に強く影響する場合、価格弾力性の分析結果が価格戦略に反映されにくいことがあります。また、経済環境の変動によっても価格弾力性は変わる可能性があり、特に不景気やインフレの影響で消費者の購買行動が変化する場合には慎重な価格設定が求められます。


7. まとめ

需要の価格弾力性は、消費者の価格感度を測る重要な指標であり、企業が適切な価格戦略を設計する際に役立ちます。消費者が価格に敏感である場合や、逆に価格変動に対して安定した需要を持つ場合、それぞれに適した戦略を活用することで、企業の収益性を向上させることが可能です。

価格弾力性を理解し、消費者の行動を予測することは、現代のビジネス戦略において不可欠です。



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