管理会計において社内取引・社内売上を設定するメリットとデメリット(その3)

2020年10月05日 / 最終更新日 : 2021年11月18日

社内売上や社内取引という科目や形態をなぜ取り入れるのでしょうか。
社内の部門間の取引ですので、企業全体としての最終利益を算出する上で、社内売上やその社内取引からの部門利益は相殺されてしまいます。
今回は管理会計において社内取引・社内売上を設定するメリット・デメリットを改めて考えたいと思います。本シリーズ3本目の記事です。



なお、以前の記事はこちらです。

管理会計において社内取引・社内売上を設定するメリット・デメリット(その1)はこちら

管理会計において社内取引・社内売上を設定するメリット・デメリット(その2)はこちら


社内取引・社内売上のメリット

 ホールディングス形態を採用し、いくつかの事業会社をグループとしている場合でも、グループ全体の決算では連結消去を行う手間が掛かってしまいます。
一方で多くの企業が管理会計を採用し、社内売上や社内取引を設定し現場運用しています。これには、デメリットを上回るメリットがあるからです。
企業によっては経理部や財務部の他に、管理会計を専門とする部署を事業管理部という名称などで事業計画やその進捗を取りまとめる部門を設置している会社もあります。
社内売上や社内取引を現場導入するメリットを中心に、そのデメリットも踏まえつつ、管理会計上の運用のポイントを解説していきます。

  1. 管理会計上の社内売上、社内取引とは?
  2. 間接費や間接部門のコスト管理は経営の重要課題
  3. 社内売上や社内利益の導入の実務現場でのメリット
  4. 中小企業ではどう取り入れるべき?デメリットも

 

  1. 管理会計上の社内売上、社内取引とは?

当たり前のことのようで難しいのがコスト管理です。
売上に紐つけることが容易なものは原価に算入すれば問題ないですが、原価に直接反映することが難しい間接費の課題が存在します。
その解決に社内売上や社内取引が有効な場合があります。
間接部門が社内サービスを行う際に、擬似的に取引があったことにして、その対価を受益側の部門が負担し、役務を提供した部門に売上を管理会計上、計上します。
実際に金銭授受などの支払いは起こしませんが、社内売上伝票やシステム上では取引を登録します。

  1. 間接費や間接部門のコスト管理は経営の重要課題

社内売上や社内取引により間接部門がどれだけ社内の他の部門に対して売上があるのか、すなわち、間接部門として貢献しているのかが管理会計上で明確になります。
また間接部門の他部門に対する役務サービス提供に対して、過剰な人員体制になっていないか、設備利用に対する課金売上であれば、設備が社内ニーズに対して過剰ではないか、ということが管理会計上の部門利益にコスト反映することにより、見えるようになってきます。
利用部門も対価を払うことで、不必要な役務提供の依頼や設備利用も減ります。
可視化できればコントロールすることができますので、経営視点で間接部門の必要コストを適正にすることが可能となります。



  1. 社内売上や社内利益の導入の実務現場でのメリット

簡単な例で考えてみましょう。
社内の会議室を利用する場合に、利用部門に対価を払ってもらい、管理する総務部に売上が計上されるという管理会計運用を考えてみます。
今まで利用部門は社内の会議室利用に課金されなかった為に長いミーティングも行われていたことに対し、タイムマネジメントが働くようになります。
予約したまま利用しない、ということも課金があることで改善が進むでしょう。
最近のコロナ禍影響で、テレワークも多くミーティング自体がWeb会議ツールに移行しつつある今、会議室が利用されない実態も明確に数値化されて表れてきます。
利用部門からの課金収入が減り、サービス提供部門の部門利益が減る、赤字転落するなどを機会にオフィス集約や賃貸面積の縮小など経営視点での課題を定量的に検討可能な可視化が得られます。

  1. 中小企業ではどう取り入れるべき?デメリットも

社内取引や社内売上の現場導入により、自部門の売上やコストに対して現場自らが敏感になって自律的にコストマネジメントが働くというメリットの一方、社内取引を計上したり、仕訳するオペレーションコストがかかるデメリットが存在します。
そもそも経営層が、十分に目が届く範囲であったり、社内で実績を競い合うような部門自体が少ない、存在しない場合は思ったメリットが享受できない場合もあります。
複数の事業部門がある場合や、支店制など営業部門が複数あって物理的にも離れている場合などは社内売上や社内取引の導入を検討してみる余地はありそうです。



最後まで読んで頂きありがとうございました。
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