PER(株価収益率)とは?:企業価値を見極めるための基本指標

2025年08月11日 / 最終更新日 : 2025年07月15日

PER(Price Earnings Ratio)とは、株価が1株当たりの当期純利益(EPS:Earnings Per Share)の何倍で取引されているかを示す指標であり、株式投資において非常に重要な役割を果たします。PERは、現在の株価が企業の収益力に対して割高なのか割安なのかを判断するための尺度となります。本記事では、PERの基本的な計算方法から、投資判断における具体的な活用方法、PERのメリット・デメリット、そして他の投資指標との比較について詳しく解説します。



1. PER(株価収益率)とは?

PERは「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。これは、株価が1株当たりの純利益(EPS)の何倍に相当するかを示す指標です。例えば、株価が1000円でEPSが100円の企業の場合、PERは10倍となります。この10倍という数値は、投資家がその企業の1株当たり利益に対して10倍の価格を支払っていることを意味します。

PERは、「この企業の株価は高いのか、安いのか?」という基本的な疑問に答えるための重要な指標です。一般に、PERが低いと割安であるとされ、PERが高いと割高であると判断されます。しかし、PERの解釈には業種や市場の状況も影響するため、単純に「高い・低い」で判断するのではなく、慎重な分析が必要です。



2. PERの計算方法

PERは以下の式で計算されます:

PER=株価÷1株当たりの当期純利益(EPS)

あるいは、企業全体の数値を用いて以下のようにも表せます:

PER=時価総額÷当期純利益​

具体例として、ある企業の株価が2000円で、1株当たりの純利益(EPS)が100円の場合、PERは以下のように計算されます。

PER=2000円÷100円=20倍

この場合、投資家は1株当たりの利益に対して20倍の価格を支払っていることになります。PERが高いほど、投資家がその企業の成長期待を織り込んでいると解釈されることが一般的です。



3. PERの役割と投資判断への応用

PERは、企業の収益力に対する株価の水準を示すため、投資判断において非常に重要な役割を果たします。しかし、PERを用いた投資判断には、次のような点に注意が必要です。

1. 業種ごとのPERの違い

PERは業種によって標準的な水準が異なるため、同じPERでも割安・割高の判断が変わります。例えば、成長性の高いITやテクノロジー企業では、PERが高くなる傾向があります。これは、投資家が将来の収益成長を期待しているためです。一方で、製造業やインフラ系の企業では、比較的PERが低くなる傾向があります。

2. 成長企業と安定企業の比較

成長企業と安定企業では、PERの評価基準が異なります。成長企業ではPERが高めでも、将来の利益拡大が期待されるため割高とは見なされないことが多いです。一方で、安定した収益を上げている企業の場合、PERが低い方が投資妙味があるとされます。

3. 株価が下がってもPERが高くなる場合

注意すべき点として、企業の利益が減少した場合、株価が下がってもPERが高くなることがあります。例えば、業績悪化で利益が急落した企業の場合、EPSが減少するためPERが急上昇します。このようなケースでは、PERの数値だけで判断するのではなく、企業の収益状況や今後の見通しを慎重に検討する必要があります。



4. PERのメリットとデメリット

PERには多くのメリットがありますが、同時に限界も存在します。以下に、PERのメリットとデメリットを示します。

メリット
  • 直感的に理解しやすい:PERは「何倍の価格を支払っているか」という形で表されるため、株式投資初心者でも理解しやすい指標です。
  • 比較が容易:同業他社や過去のPERと比較することで、企業の評価を相対的に把握しやすい点がメリットです。
  • 成長期待の有無を判断できる:PERが高い企業は成長期待が織り込まれている場合が多く、投資家が将来の収益成長を見込んでいると考えられます。
デメリット
  • 業種や市場環境に依存:PERは業種ごとに異なるため、異業種間での単純な比較は適切ではありません。
  • 利益の変動による影響:PERは企業の利益に依存するため、一時的な利益の変動で大きく数値が変わることがあります。これにより、一時的な業績悪化でPERが急上昇し、割高に見えることがあります。
  • 成長率を考慮しない:PERは現在の利益のみを基にしているため、将来の利益成長率を考慮していません。成長性が高い企業に対しては不十分な指標となる可能性があります。



5. 他の指標との比較:PBRやROEとの関係

PERと似た指標として、PBR(Price Book-Value Ratio、株価純資産倍率)やROE(Return on Equity、自己資本利益率)があります。これらの指標と組み合わせることで、より多角的に企業の評価が可能となります。

PBRとの比較

PBRは、株価が企業の純資産(株主資本)の何倍で取引されているかを示す指標です。PERが収益力を示す指標であるのに対し、PBRは企業の資産価値を基にした指標となります。一般に、PERとPBRを組み合わせることで、企業が割安・割高であるかの判断がより精度を増します。

ROEとの比較

ROEは、自己資本に対する純利益の割合を示し、株主が出資した資本がどれだけ効率的に使われているかを表します。ROEが高い企業は収益性が高く、投資家にとって魅力的であることが多いです。PERとROEを比較することで、株価が高い理由や、利益率の高さなど、企業の収益性についてより深く分析できます。



6. PERを活用した投資戦略

PERを活用することで、さまざまな投資戦略を組み立てることが可能です。ここでは、PERを用いた代表的な投資戦略を紹介します。

1. 低PER銘柄への投資

PERが低い銘柄は、一般的に割安と見なされ、配当利回りが高い場合が多いです。このため、低PER銘柄は配当を重視する投資家にとって魅力的な選択肢となります。

2. 成長性を重視した高PER銘柄への投資

一方で、PERが高い企業でも将来の成長が期待されている場合は、今後の収益増加を見込んで投資することが可能です。特に新興企業やテクノロジー関連企業など、成長性の高い分野では高PERが当たり前となる場合もあります。

3. 業種別の平均PERを参考にした投資判断

業種ごとにPERの平均値は異なるため、特定の業界の平均PERと比較して、割高・割安を判断する方法もあります。同業他社と比較することで、相対的な投資価値を見極めることができます。



結論

PERは株価と企業収益力の関係を示す基本的な指標であり、投資判断において有用なツールです。しかし、PERのみで投資判断を下すのは避け、PBRやROEなど他の指標と組み合わせることで、より精度の高い分析が可能となります。また、業種や市場環境も考慮し、長期的な視点でPERを活用することが重要です。


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