労働分配率とは?計算方法や適正値の基準を具体事例つきで解説
2023年12月15日 / 最終更新日 : 2023年11月02日労働分配率は、人件費の割合を表した数値です。安定的な企業経営には、適切な労働分配率が不可欠とも考えられています。しかし、どのように計算してどれほどの数値であれば適正なのか、が分からない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、労働分配率の計算方法や基準値など、具体事例を交えて解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
労働分配率とは
労働分配率とは、企業の利益から人件費をどれだけ配分したか示す割合です。人件費が適切かを判断するために用いられます。
企業の経営には人件費の分析が欠かせません。企業経営において、最も負担となるのが人件費と考えられるからです。
労働分配率が高ければ、給与などの人件費が多く従業員のモチベーションが高いと考えられます。一方で、経営を圧迫している状態ともいえます。労働分配率が低ければ、資金に余裕があると考えられますが、従業員のモチベーションは低下しているかもしれません。
労働分配率は、低ければ良いわけではなく、企業に適した数値を理解して経営に活用することが重要です。
労働分配率の計算方法
労働分配率は次の計算式で算出できます。
労働分配率(%)=人件費÷利益(付加価値)×100
イメージしやすいように簡単な事例をご紹介します。2,000円の商品を1,000円で仕入れて、5人の従業員で1,000個を販売した場合の事例です。
販売価格 :2,000円
材料費 :1,000円
販売個数 :1,000個
従業員数 :5人
人件費 :1人10万円
労働分配率:50万(円)÷100万(円)×100=50(%)
人件費は「5(人)×10(万円)=50万(円)」となります。利益は「2,000(円)-1,000(円)×1,000(個)=100万(円)」です。計算式に当てはめると「50万(円)÷100万(円)×100=50(%)」となります。
シンプルな事例をご紹介しましたが、実際はこれほど単純ではありません。利益(付加価値)の算出方法や人件費の種類には多様な考え方が存在するからです。以下でさらに詳しく解説します。
付加価値
付加価値とは、企業が生み出した価値を意味します。分かりやすい例が企業の利益です。付加価値の算出方法には2通りの考え方があります。「控除法」と「加算法」です。両者には計算方法や内訳に違いがあります。
控除法
控除法とは、売上から材料費などの仕入れ価格を差し引いて、付加価値を算出する方法です。具体的な計算式は次のとおりとなります。
付加価値=売上高-外部購入価値
外部購入価値は、商品製造にかかる費用で、材料費以外にも外注費や運送費などの経費が含まれます。売上と経費が分かれば算出できるため、比較的簡単に算出が可能です。多くの企業でも活用されており、中小企業庁方式とも呼ばれています。
加算法
加算法とは、商品の製造過程で価値が足されていく考え方の計算方法です。以下の計算式で算出できます。
付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃貸料+租税公課+経常利益
内訳が多いため詳細な数値が算出できる反面、算出に必要な項目が多いため計算工程が複雑になってしまう特徴があります。日銀方式とも呼ばれ、大企業で活用されるのが一般的です。
人件費
人件費に含まれる費用も多種多様です。人件費として挙げられる基本的な費用をいくつかご紹介します。
- 給与
- 賞与
- 退職金
- 役員報酬
- 社会保険料
- 労働保険料
- 福利厚生費
- 研修教育費 など
上記は一例にすぎません。人件費に該当するかどうかは、税理士などの専門家に確認する必要があります。大雑把に、人材にかかる費用と覚えておきましょう。
労働分配率の基準
労働分配率は企業によって適性値が異なります。人材が不可欠な業種もあれば、少人数でも運営できる業種もあるからです。基準値を確認していれば、自社の適性値も判断しやすくなるでしょう。
以下でご紹介する情報は、経済産業省が公開している企業活動基本調査の抜粋データです。適性値を見極める参考としてご活用ください。
業種 | 労働分配率 |
卸売業 | 49.7% |
小売業 | 49.5% |
製造業 | 51.0% |
電気・ガス業 | 22.3% |
出版業 | 48.2% |
生活関連サービス業、娯楽行 | 72.9% |
飲食サービス業 | 74.9% |
情報通信業 | 53.9% |
全業種平均 | 50.7% |
上記データは2021年度(2020年度実績)の情報ですが、2022年度以降は公表が取りやめされているため、現時点での最新情報となります。
経済産業省のサイトでは、その他の業種についても紹介されていますので、気になる方は「経済産業省企業活動基本調査 / 統計表一覧-確報(概況) / 2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-(付表/2/付表)」のExcelデータをご覧ください。
まとめ
労働分配率とは、人件費の適正を見極めるための指標です。適切な人件費の分配は、安定的な経営と従業員の満足度向上の両立が期待できます。この機会に自社の労働分配率を確認し、人件費の見直しをおこなってみてはいかがでしょうか。
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