事業計画書の書き方 その2 ストーリーを組み立てる
2021年09月20日 / 最終更新日 : 2021年08月30日中小企業診断士の山田盛史です。
事業計画書の書き方と題して、何回かに分けて事業計画書作成のポイントを解説しています。
関連の記事はこちらです。
▼事業計画書の書き方 その1 市場規模の考え方
https://will-links.jp/?p=1287
▼事業計画書の書き方 その3 事業に連動した収支計画を作る
https://will-links.jp/?p=1296
▼事業計画書の書き方 その4 目的別の事業計画書作成のポイント
https://will-links.jp/?p=1300
今回は事業計画書の骨子とも言えるストーリーの組み立てについて解説します。
このストーリーがしっかりしているかという点は非常に重要になります。
ストーリーとは何か
そもそも事業計画におけるストーリーとは何かという事ですが、端的にいうと「なぜその事業をやるのか」「なぜあなた(自社)がその事業をやるのか」ということを説明することである、と定義します。
例えば、あなたがサラリーマンから独立して、ある地区(A地区とします)で富裕層向けの焼肉店を開業したいと考えているとします。焼肉店は排煙装置などの換気設備にお金がかかるので他の飲食店より開業資金が必要になります。そこで、創業融資を受けるために事業計画書を作るとしましょう。事業計画書を説明する相手は金融機関になります。金融機関は主に次のことを知りたいと思うでしょう。
「あなたはどういう人でどんな経歴があるのか」
「なぜあなたが焼肉店をやるのか(過去の経歴とつながりがあるのか)」
「なぜA地区に出店するのか」
「なぜ高級焼肉店にするのか」
他にも「設備資金、運転資金はどれくらいかかるのか」など財務面の話もありますが、まずは事業面の話として、このような疑問に対する答えを一貫したストーリーで語ることが必要になります。
ストーリーの例
前述の疑問点に対する回答を考えてみましょう。
例えば、「あなたはどういう人でどんな経歴があるのか」については
→現在、ある焼肉店チェーンで勤務しており焼肉店の運営に関する経験や知見がある
「なぜ焼肉店をやるのか」については
→コロナ禍でイートインの飲食店売上は減少しているが、焼肉店は無煙ロースターなどの換気設備が充実しており、かつ目の前で、セルフで焼くためコロナの感染を懸念した顧客の減少が少なく売上高が堅調であるから。
東京商工リサーチの調査データによると倒産件数が過去10年で最少になっている等の第三者の市場調査データなどを示して主観ではなくデータの裏付けがあると良いです。
「なぜA地区に出店するのか」については
→A地区は近隣に焼肉店がなく競合店がないから。
「なぜ高級焼肉店にするのか」については
→A地区は富裕層が多いから。
といった内容になります。なぜ、あなたがその事業を行うのか、といった事やどのように事業を行うのかを一貫したストーリーで説明できれば、理解されやすくなります。
ポイントは主観ではなく、第3者の調査データや官公庁の統計データなどを参考にしながら、理由の裏付があることです。
事業の発想自体は単なる思いつきや個人的な経験や原体験をもとに考えれば良いのですが、そのアイデアや主観が本当に正しいのかを客観的なデータや事実をもとに検証をするのです。
ストーリーを説明するための事業計画書の目次と構成
事業計画書はこのように一貫したストーリーを説明するものです。このストーリーが事業計画書の構成や目次になります。事業計画書の目次例は以下のようになります。
1.創業者の略歴/企業概要
2.事業立ち上げの経緯/事業内容
3.自社の強み・アピールポイント
4.市場の状況・顧客ニーズ
5.実施する事業の具体的内容
-ターゲット顧客
-提供する商品やサービス
-販促計画
-人材計画
-収支計画
-資金計画等々
まず、創業の場合は創業者の経歴、すでに事業を行っている場合は企業概要や既存事業の概要を説明します。そして、これまで培ってきた自社の強みやアピールポイントを説明します。合わせて、今後行う事業における市場環境や顧客ニーズを説明します。
このような内容を説明した後に、今後計画している事業内容の詳細を説明していきます。
ストーリーを考えるためのフレームワーク
事業計画を考える上でのフレームワークは数多くありますが、一般的で代表的なものを2つご紹介します。
①SWOT分析
SWOT分析とは、内部環境である強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部環境である機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字を取ったフレームワークです。
創業者の経歴や自社のこれまでの事業から培ってきた強み、つまり他社と比較して優れている事や得意としていることを棚卸しします。逆に他社と比較して弱い部分も抽出します。
合わせて、機会と脅威を整理します。機会とはビジネスチャンスとなる事象です。先程の例だとコロナ禍でも焼肉店の売上が落ちていないという点が機会になります。脅威とはビジネスを阻害する要因です。飲食店だと新型コロナによるイートイン需要の減少などがあげられます。
内部環境である強み・弱み、外部環境である機会・脅威を整理した上で、今後行う事業を考えます。考え方は自社の強みを活かして、機会を捉える事業を展開するという事を意識します。自社はこんな強みがあり、市場ではこんなニーズ(ビジネスチャンス)があるので、今後はこんな事業を行っていきます。といった具合に現状分析と今後の事業展開の方向性を一貫したストーリーで、事業計画書で伝えるのです。
ちなみに、SWOT分析は経営学の教科書で必ず登場する定番のフレームワークです。私も中小企業診断士の実習やMBAの講義、実務の中で幾度となくSWOT分析を行って来ましたが、実際にはSWOT分析を使って分析することで新しい発想が生まれたり、事業の成功確率が高まるかと言われれば、やや疑問です。分析に主観が入り、恣意的になりやすい側面もあるからです。
では、なぜSWOT分析を紹介したかと言うと、利害関係者に説明するのに分かりやすいからです。SWOT分析はメジャーなフレームワークであり、分かりやすいので事業計画を第三者に伝える際には、相手に分かりやすく伝えることができるので、そういった活用をする際に有用だと思います。
②3C分析
もう1つ事業計画を考える上で活用しやすいフレームワークをご紹介します、3C分析です。こちらも有名なフレームワークでSWOT分析と同様に分かりやすいです。
3Cとは自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの頭文字を取ったものです。自社の得意な事や優れている事を活用でき、顧客ニーズがあり、競合とも差別化を図れる部分を特定し、事業を行うという考え方です。
SWOT分析は競合の視点が弱くなりやすいのですが、3C分析では競合の調査や分析をしっかり行って、勝てる部分で勝負するという考え方になります。
3C分析も事業計画の一貫したストーリーを伝える際に活用できるフレームワークです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。事業計画を分かりやすく利害関係者に伝えるためには一貫したストーリーで事業計画書を作ることが重要です。
その際、フレームワークを意識して考え方を整理してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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