中小企業の会計ルールに準拠した決算書を作るための「中小会計要領」について解説します

2021年12月10日 / 最終更新日 : 2021年11月10日

はじめに

近年、会計基準の国際的調和化に伴い様々な企業会計基準が公表されています。

しかし、その多くは国際的に資金調達を行っている大企業向けのものであり、国内の多くを占める中小企業にとっては過度に専門的な内容となっています。

そこで、中小企業の実態に即した会計ルールとして策定されたのが、「中小企業の会計に関する基本要領」(以下、「中小会計要領」)です。

以下では、この中小会計要領の概要と導入のメリットについて、解説していきます。


中小会計要領の概要

非上場企業である中小企業には上場企業や大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社)と比較して以下のような特徴があります。

 

・新株発行等による資金調達はほとんどなく、金融機関からの借入れが中心

・決算書の開示先は金融機関、取引先、既存株主等に限られる

 

つまり、現状では中小企業が資本市場から直接に資金調達を行うことはあまりないため、大企業ほどには詳細な情報開示が求められないといえます。

 

また、中小企業には以下のような実態もあります。

 

・決算書作成の主な目的は税務申告

・経理担当者の人数が少ない

 

このような実態から、中小企業の会計ルールには従来からの会計慣行に沿った形で会計と税制の調和を図りつつ、決算書の作成負担を最小限に留めることが求められます。

 

中小会計要領は中小企業の上記のような特徴・実態を考慮しつつ、中小企業庁と金融庁が共同事務局となって策定されたものです。



中小会計要領を導入するメリット

中小会計要領を導入すると以下のようなメリットがあります。

①会社法に適合

全ての株式会社は会社法による規制を受けています。

中小会計要領は会社法が求める「一般に公正妥当な企業会計の慣行」に適合するものとされているため、中小会計要領に準拠して作成した決算書は会社法に適合したものとなります。

②コスト削減・収益拡大

中小会計要領により社内で同一の基準を適用することで、投下するコストも同一基準で評価することが可能となり、固定費削減のほか、仕入価格や外注費の価格交渉を行うことができます。

また、正確な決算書をもとに事業や案件ごとの分析を行うことで、低付加価値な事業から高付加価値な事業へとシフトを進めることができます。

そして、これらの取組みが結果として、コスト削減や収益拡大につながることとなります。

③資金調達力の強化

中小企業にとって、必要な時に円滑に資金調達が行われることは非常に重要なことです。金融機関は融資を行う際に、大企業に対して行うのと同様に十分な情報開示を求めます。

中小会計要領を導入して、決算書の作成負担を最小限に留め月次の計数管理を行うことができれば、金融機関が必要とする情報をタイムリーに提供することができます。

その結果、金融機関での審査もスムーズに行うことができ、資金調達力の強化につながります。


まとめ

中小会計要領の導入によって、中小企業は決算書を過度な負担なく作成できます。

また、取引金融機関に対する信用力も向上するため、資金調達もスムーズに行うことができます。

さらに、経営者自身の財務・会計に関する理解が深まる結果、自社の課題を発見し、それを克服することで、経営力を強化することもできるのです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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