独占禁止法における「優越的地位の濫用」と新規上場株式の公開価格との関係とは
2022年04月20日 / 最終更新日 : 2022年03月11日独占禁止法は中小企業や大企業、上場企業と幅広い事業者に関連する法律です。経営者として知っておきたい独占禁止法について解説します。
独占禁止法とは
独占禁止法はその正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」と言い、公正な競争原理を促進し、事業を行う者が自主的な判断で活動できるよう、さまざまな規制をしている法律です。例えば、市場原理に任せると需要と供給の関係から市場価格が下がるべき局面があったとして、事業者同士で値段を下げないように申し合わせたりすると、一般消費者に不利益が生じることがあります。あるいは、競争相手が増えないように、既得権益を持っている事業者で新規参入者を締め出したりすると、正常な競争環境が整わず、一般消費者や新規参入者にとって不利益が生じ、経済の活性化が阻害されてしまいます。そういった事態が生じないよう、公正取引委員会が独占禁止法に違反する者を取り締まっています。
「優越的地位の濫用」とは
独占禁止法は「不公正な取引方法」を禁止していますが、その類型の一つが「優越的地位の濫用」です。自分の取引上の力関係が強いことを利用して、正常な商慣習に照らして不当な取引条件を定めることが規制されています。下請法も同じように親事業者が立場を利用して下請事業者に不当な条件を押し付けたりすることを禁止していますが、取引上有利な立場にいるのは必ずしも親事業者とは限りません。受注者であっても、発注する側に他に選択肢がなく、受注してもらわなければ発注者の事業が立ち行かないような場合、受注者の方が優越的地位にいることもあるわけです。下請法の規制が及ばない場合にも取り締まることができるという点で、独占禁止法が優越的地位の濫用を規制している意義はあるでしょう。
新規上場株式(IPO株)の値付けのメカニズムとは
新規上場株式の募集価格を公開価格と言います。証券会社が公開価格で新規公開株を購入する投資家を募集します。新規公開株は多くの場合、上場すると公開価格を上回る初値をつけますが、その初値は平均で公開価格の1.5倍とも言われています。
公開価格で購入した投資家は当然、差益を得やすいため、証券会社は重要顧客をつなぎ止めるためにIPO株への申し込みを勧めたりすることがあるのです。そういった背景から、証券会社には公開価格を低めに設定するインセンティブが働きます。
一方、新規上場する企業側としては、公開価格を低めに設定されてしまうと、その分調達できる資金が減ることになりますので、適正価格での設定を望むことになります。上場に際して、主幹事となる証券会社は上場する会社側で選ぶことができますが、IPOの実績を考えると、けっして選択肢が多いとは言えないでしょう。また、公開価格を調整する段階に入ると、専門家である証券会社がイニシアティブを取ることとなります。日本のIPOでは基本的にブックビルディング方式が採用されますが、証券会社が機関投資家の意向を確認しながら条件を設定していくことになるため、どうしても上場会社側は証券会社任せになりやすい面があります。
値付けと優越的地位濫用との関係とは
公正取引委員会は令和4年1月28日に公開した報告書の中で、企業の上場に際して中心的役割を果たす主幹事証券会社が、一方的に過小な根付けをする商慣習について、独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたる可能性があると指摘しました。公正取引委員会は、直近で新規上場を行った企業や証券会社に聞き取りを行って実態を調査しました。今回の調査では違反事例はなかったとのことですが、この公正取引委員会の報告書を受けて、IPO株の公開価格の設定について、不当に割安にならないように慎重な対応をする証券会社が増えるかもしれません。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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