経営コラム

Management column

EVAのメリット・デメリット

2020年07月10日 / 最終更新日 : 2020年07月07日

前回、EVAによる企業価値評価についての意味や計算根拠についてご説明しました。今回は実際に活用することのメリットやデメリットなどを見ていきましょう。



 

EVAを活用するメリット2つ

○資本を圧縮できる

EVAを活用することで、資本の圧縮を行うことができます。例えば毎期黒字を出している事業はP/Lだけを見てみると「良い事業」だと判断されてしまいがちです。しかし、その事業にP/L上であらわされていない費用(資本コスト)がどれだけ投入されているのかを判断することはできません。毎期黒字であるが、莫大な資本コストを投入している事業というのは、目線を変えると撤退推奨事業にもなりえるということです。EVAを用いることで、資本の効率化を図ることが可能となります。

○資本コストの圧縮ができる

キャッシュフローや利益のみを見ていると、資本コストを見える化することはできません。EVAを用いると、EVAをプラスにするために資本コストの圧縮を図らなければなりません。そのために、「IR活動を行い株主への経営の透明性をアピール」したり、「自己株式を取得する」といった活動を明確に行っていくことの理由付けが可能となります。


EVAを活用する際に気をつけるべきこと3つ

○長期的な判断にはむかない

前回の記事で説明したとおり、1年間の税引後営業利益を基準として単年度の指標として活用されます。よって、長期で利益を生み出すような「1年を超える投資や費用」が存在すると必然的にEVAは低下してしまいます。一方で短期的にEVAを改善するために、長期での費用や投資を抑制することができてしまうためEVAの向上のみを目的としてしまうことで長期的な投資に弊害が生まれてしまう可能性があります。

○事業部別資本コストの算定困難

パナソニックなどのカンパニー制を敷いている企業や、多角的に事業を行っている企業では他企業に比べて正確なEVAの算出をすることが容易ではありません。各事業によって予想される投資リスクが全く異なるからです。しかし一方で企業の株価は1つの数字でしか表せません。その株価に対しての各事業の按分を考えることは非常に難易度が高いといえます。

○株式市場に左右される

EVAを導入し、推進している企業はEVAが低下してしまうことがよくあります。なぜなら時価総額が上昇してしまうからです。前述したようにEVAはNOPATから投下資本×資本コストを差し引くことで算出されます。時価総額が上昇すると、投下資本が増加してしまうので、一時的にEVAが下がってしまうのです。このようにEVAの向上を目指す場合、想定以上に株価が上昇することで目標としていたEVAに到達できないという問題点があります。

 



今回、EVAによる企業価値算出の良い部分と悪い部分を説明していきました。数値をコントロールできてしまう盲点や事業部別の数値算出の正確性が課題としてありますが、それらの欠点を理解したうえで有効に活用していくことが大切になってきます。皆さんがバリュエーション評価をする際に活かしていただければと思います。


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