化粧品業界のICT化が必要な理由とは?テック活用の可能性をご紹介

2021年12月20日 / 最終更新日 : 2021年11月16日

ICTの導入は、近年日本国内でも多くの業界で進められている取り組みです。
ICT導入の進捗は業界によってまちまちですが、比較的遅れをとっているとされるのが化粧品業界です。

デジタル技術の活用機会は少ないとも考えられる化粧品業界でも、ICTの導入によって多くの恩恵に預かることが可能です。
今回は、化粧品業界の抱える課題に注目しながら、ICT導入によってどのようなメリットを得られるのかについて、ご紹介します。



目次:
①化粧品業界が抱える課題
②ICTの導入で化粧品業界が得られるメリット
③化粧品業界におけるICTの導入事例

化粧品業界が抱える課題

ICTの導入は、いずれの企業においても何らかの課題を解消するために行うものです。まずは化粧品業界が抱えている課題について、確認しておきましょう。


小売店舗の縮小

今日の化粧品業界にとって、最も大きな問題となっているのが小売店の規模が小さくなっている点にあるでしょう。
新型コロナウイルスの影響により、化粧品販売店の多くは休業を余儀なくされています。
というのも、多くの販売店を抱えているデパートなどの大型商業施設が、現在は休業中か大幅な営業時間の短縮を強いられているためです。

経済産業省の発表によると、2020年の化粧品市場規模は前年より391億円のマイナスとなる984億5,759万円に留まっており、小売店の休業による影響が大きく現れていることがわかります*1。

また、小売店の営業が縮小しただけでなく、海外からの観光客が激減していることも化粧品業界に大きな打撃を与えています。
2021年現在、海外からの渡航は大幅に制限されており、外国人観光客による化粧品の購入も、現在は大幅に失われてしまっています。
実店舗以外に海外とのチャネルを設けていなかった企業は、新型コロナによる集客の大幅な減少に悩まされています。

接客機会の減少

小売店舗での販売機会が失われてしまったことで、もう一つ化粧品業界に打撃を与えることとなったのが、接客機会の減少です。
従来の化粧品販売というのは、実際に店舗を訪れて、美容部員などのスタッフと相談したり、実際に商品を試したりしながら購入してもらうというフローが一般的でした。
しかし新型コロナによって、見込み客と美容部員の接点が大幅に失われてしまい、商品を接客によってプロモーションしたり、実際に試してもらったりする機会は大幅に失われています。

従来商品のリピート購入などは、こういった接客や販売促進活動の必要はないため、大きな問題はないかもしれません。
しかし新商品の販売や、新規顧客の獲得を増やしていきたい場合、接客機会が大幅に失われていることは、各企業に大きな機会損失をもたらしてしまっています。


ICTの導入で化粧品業界が得られるメリット

上記のような問題を解消するため、化粧品業界ではICTの活用が積極的に進められています。ICT活用がどのようなメリットをもたらすのか、ここで3つほど見ていきましょう。

新たな販売チャネルが確保できる

一つ目のメリットは、新しい販売チャネルの確保です。これまでオフラインでの販売に力を入れていた場合、オンライン販売に進出することで、新しい顧客の獲得に動けるようになります。

オンライン販売の大きなメリットが、場所を問わず見込み客にアプローチができる点です。実店舗では、その周辺で生活している人にターゲットは限定されてしまいますが、オンラインでは日本全国のあらゆるユーザーにアプローチできます。

特に近年は、オンラインで買い物は完結させたいという消費者も急激に増加しています。ここ数年、IT環境の普及によって、オンラインショッピングの割合は増加傾向にありましたが、新型コロナの影響により、その勢いはますます加速しています。

総務省統計局の発表によると、2020年の5月には2002年以降初めて普及率が5割を超えるというマイルストーンの達成も見られました*2。
以降も継続的な消費が行われていることから、オンライン販売は今後も日本人の一般的な消費形態として定着していくと予想されます。

また、オンライン販売は海外顧客向けのチャネルとしても機能するため、外国人観光客の減少による売り上げの低下をカバーする働きも期待できます。
海外向けのプロモーションとオンラインサイトを構築し、継続的なグローバル展開を進めていくのも効果的です。


美容部員の活躍機会を増やせる

オンライン販売の普及とともに、美容部員の活躍機会も新たに設けることができます。近年、オンラインでの化粧品販売において重視されているのが、SNSやブログの活用、そしてライブコマースです。

ライブコマースは、SNSなどのライブ配信機能を活用して、リアルタイムで実演販売をオンラインで実施するという手法です。中国や欧米を中心に盛んに展開されており、大きく売り上げに貢献しています。

小売店の休業で接客機会が失われた分、SNSやブログによる商品紹介や、ライブコマースによる実演販売に力を入れることで、人材を有効活用し、新しい顧客の獲得にもつながります。
また、Zoomなどを使ったオンライン接客も各企業で導入されています。非対面でも顧客とマンツーマンでコミュニケーションが取れるため、有効な販促効果を期待できます。

業務効率化に貢献する

ICTの導入は、販売だけでなく生産部門にも効果を発揮します。管理体制を見直し、生産システムを大幅に自動化することで、人材不足の解消や、人件費の減少、そして生産効率の向上につながります。

化粧品業界におけるICTの導入事例

最後に、実際のICT導入事例について2つほど確認しておきましょう。

株式会社Sparty

株式会社Spartyでは、各ユーザーに最適なスキンケア商品、ヘアケア商品を提供するサブスクリプションサービス、「HOTARU PERSONALIZED(ホタルパーソナライズド)」と「MEDULLA(メデュラ)」を展開しています。ユーザーへアンケートに答えてもらい、診断結果をもとにそれぞれの人にあった成分を調合して届けるというサービスを提供し、大きな反響を得ています。

顧客一人一人にあった化粧品を、オンライン上の手続きだけで完結させており、尚且つ高い満足度を得ていることから、注目を集めています。
オンライン需要増加に伴い、ユーザー数は2019年の7~8万人から、2020年には21万人にまで会員数が増加するという快挙を達成しました*3。



株式会社ヤマサキ

広島の化粧品メーカーであるヤマサキは、生産部門のICT導入に力を入れ、結果につなげている企業です。
主力商品のヘアケア商品の試供品は、毎日10万包という膨大な生産量に達しているのですが、これらをたった3名の従業員で担当しています。

圧倒的な効率の生産システムを支えているのが、試供品生産の専用機械と、原料の入荷から出荷までのプロセスをワンストップで管理する高度なマネジメントシステムです。材料の管理や発注などをほぼ全て自動化できる仕組みが整備されているため、人間の手をほとんど必要としないのが特徴です。
ペーパーレスの促進と発注ミスの減少にも役立っており、高い生産効率を実現しています*4。

おわりに

今回は、化粧品業界にICTを導入することで得られるメリットなどについて、事例とともにご紹介しました。ICT導入のスケールは企業によって様々ですが、多様な課題解決のため、小規模から導入が可能です。自社の業務課題改善に悩んでいる場合、前向きな導入の検討をお勧めします。

参考:

*1 経済産業省「経済産業省生産動態統計」

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu2

*2 総務省統計局「新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング」

https://www.stat.go.jp/info/today/162.html

*3 transplus「【化粧品編】キーワードは「パーソナライズ」。リテール業界に求められる「今」と「未来」」

https://www.trans-plus.jp/blog/report/20201005_rc_webinar_report

*4 ビジネス+IT「毎日10万包の試供品を3名で回す。広島の化粧品メーカーが明かす、徹底した自動化術」

https://www.sbbit.jp/article/cont1/43394#head2

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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