スモールM&Aにおける株式譲渡と事業譲渡の違いとは?

2021年02月25日 / 最終更新日 : 2020年12月25日

M & A の中でよく使われる譲渡手法として株式譲渡と事業譲渡があげられます。
名前が似ているこれらの手法はどういった違いがあるのでしょうか。

今回は、 M & A (ディールが1億円以下などのスモールM&Aにおける)の株式譲渡と事業譲渡の違い、それぞれ、どんなメリットやデメリットがあるのかについて解説します。


株式譲渡とは

株式譲渡とは、株主が保有する対象会社の株式を他社に売却することで、株主の地位を譲渡する取引のことをいいます。他の取引と比べて簡便な取引のため、中小企業の事業承継型M&Aでは良く利用される手法になっています。
他のM&A手法と比較すると売主・買主間の株主の売買と見ることができ、シンプルな手法ともいえます。

株式譲渡における留意点
株式譲渡によってM&Aを行う際には、以下の点を留意する必要があります。

・買収対象会社の株式を株主から相対で 取得する場合、対象会社が株券発行会社であれば、株券の交付を受ける必要がある(会社法128条1項)
・株券発行会社でない場合には、振替制度の適用がないとき、株式譲渡は合意によって効力が生じる(会社法139条1項)

株式譲渡のメリット・ デメリット
M&Aにおいて株式譲渡は、以下のようなメリットがあります。

●売り手
・会社全体を第三者に引き継ぐことができてハッピーリタイヤしやすい
・取引先へあまり影響を与えずに事業を引き継げる
・株主の手取りを最大化できる場合が多い(株式譲渡益は課税される税率が金融資産の譲渡益と同じく約20%と低率になっている)

●買い手
・取引先へあまり影響を与えずに事業を引き継げる
・資本構成に影響を与えずに買収が可能である
・企業文化の融合について別組織として運営しながら時間を掛けて行うことができる
・売り手の資産・負債その他の権利義務のすべてを引き継ぐため許認可も含めた承継が可能

そして、株式譲渡のデメリットは以下の通りです。

●売り手
・議決権の過半数以上の株式をオーナーなどが売却すると経営権を失う

●買い手
・不要な資産や事業も引き継ぐことになる
・簿外債務も一緒に引き継いでしまう可能性もある


事業譲渡とは

事業譲渡とは対象会社の事業の全部または一部を売買することです。複数の事業を行っている会社が特定の事業だけ譲渡したい場合や対象会社に存在する潜在的な債務を切り離すことを目的に選択される手法といえます。
事業譲渡では、契約という取引行為に従って、当該会社の資産や負債などが個別で移転・承継されることになります。
そのため、株式譲渡と比較すると、契約によって譲渡の対象とする資産や負債などを自由に当事者間で決めることができる反面、移転における手続きが複雑化するというデメリットもあります。
事業譲渡における留意点
事業譲渡の場合、資産・契約・従業員といった対象事業の構成要素に関しては、包括的ではなく個別に承継する必要があるので、承継対象の明確化や手続きをしっかりと行わなければいけない点が留意点といえます。

事業譲渡のメリット・デメリット
事業譲渡のメリットは以下の通りです。

●売り手
・継続したい事業や手放したくない従業員などを除外して譲渡できる

●買い手
・簿外債務や不良資産を引き継ぐ必要がない
・企業規模が拡大してスケールメリットが得られる
・のれん(超過収益力)について償却できる

株式譲渡とは違い、売却側が持っている債務や負債については、事業譲渡の場合自動的に移転するということはありません。
そのためリスクを回避しながら、新しい事業を手に入れることができるのは大きなメリットと言えます。

事業譲渡のデメリットは以下の通りになります。

●売り手
・譲渡した事業と同一事業を行うことが制限される
・事業譲渡益に対して法人税が課される

●買い手
・個々の債権債務につき売買契約を結んで移転されるため手続きが煩雑になる
・許認可の引き継ぎができない
・労働契約承継において従業員個別の同意が必要である
・債権者の個別の同意が必要になる

株式譲渡では事業に関係する許認可については引き継ぐ事ができましたが、事業譲渡では買収側が新たに許認可を取り直す必要があるので、許認可が必要な事業を承継する場合には注意が必要です。


株式譲渡と事業譲渡を選ぶ際のポイント

株式譲渡と事業譲渡のどちらを選ぶかについては、いくつかの判断基準があります。

まずは会社全体を譲渡するか否かという点です。株式譲渡の場合は、経営権の移転をすることになるため会社全体を譲渡することになります。
一方、事業譲渡は会社の事業の一部を譲渡することになるので、全部を譲渡しないという場合には事業譲渡が適していると言えます。

次に、許認可まで継承する必要があるか否かという点も重要になります。株式譲渡の場合には法人格ごと承継されるため許認可まで承継されますが、事業譲渡の場合には許認可は承継されません。

さらに、簿外債務に対するリスクを許容するか否かという点です。株式譲渡は法人格ごと承継するため、簿外債務や不良資産も引き継ぐことになります。たとえ、デューデリジェンスを行っても簿外債務がすべて把握できるという保証はありませんので、簿外債務が発生するリスクはゼロではありません。事業譲渡では簿外債務や不良資産を引き継ぐ必要がないため、簿外債務へのリスクを許容できるかどうかも大きな判断ポイントになってきます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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