労災保険とは?7種類の給付と療養(補償)給付利用の流れを説明

2023年11月10日 / 最終更新日 : 2023年10月11日

労災保険は、業務上・通勤中の事故による傷病を受けた労働者に対し、治療や休業時の補償などの給付を行う保険制度です。本記事では、労災保険給付の種類や、療養(補償)給付・休業(補償)給付の内容と制度利用の流れを説明します。


労災保険とは

労災保険とは、正式に「労働者災害補償保険法」といい労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う保険制度です。

労災保険料については労働者の負担は無く、事業主(企業)が全額負担します。


労災保険の対象者・対象となる事業

 労災保険は、原則として1人でも労働者を使用する事業のすべてに適用されます。労災保険の対象となる労働者は、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、パートアルバイト等の雇用形態は関係ありません。

 労働者を1人でも使用している事業はすべて労災保険の適用対象となり、そこで働く労働者も皆労災保険の対象となります。


労災保険の給付

 労災保険の給付は大きく7つに分類されます。

 

  • 療養(補償)給付:業務上・通勤による傷病で受診する場合の給付
  • 休業(補償)給付:業務上・通勤による傷病で仕事に行けない場合の給付
  • 障害(補償)給付:業務上・通勤中の事故・傷病で障害が残った場合の給付
  • 介護(補償)給付:業務上・通勤中の事故・傷病で介護を受けている場合の給付
  • 遺族(補償)給付:業務上・通勤中の事故・傷病によって亡くなられた場合の給付
  • 二次健康診断等給付:一次健康診断で異常の所見がある場合に二次健康診断や特定保健指導を行う
  • 社会復帰促進事業:被災労働者の社会復帰や被災労働者遺族の援護などを行う

 

 これらのうち、療養(補償)給付と休業(補償)給付は仕事生活で意外と身近にあるものです。それぞれどのように給付が行われるか説明します。



療養(補償)給付

 これには「療養の給付」と「療養の費用の支給」の2種類があります。

「療養の給付」は、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局等(以下、「指定医療機関等」)にて無料で治療や薬剤の支給など現物で給付を受けることをいいます。

「療養の費用の支給」は、近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定医療機関等以外の医療機関等で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用を後日支給する現金給付のことをいいます。

業務上・通勤によりケガをした場合には、近くに指定医療機関等があればそちらを受診し、労災保険を使用することを窓口で伝えます。指定医療機関等以外で受診する場合は、労災事故であることを伝え、医療機関の指示を受けましょう。健康保険証を提示すると、労災保険の給付ではなく健康保険の給付が行われてしまうので注意してください。

通常は、療養の(費用)請求書様式を作成し受診した医療機関等に提出して給付を得ます。



休業(補償)給付

 労働者が業務上・通勤により発生した傷病により労働することが出来なかった第4日目から受けることができる給付です。休業(補償)給付と休業特別支援金という2つの給付があり、それぞれの金額は賃金の額に応じて算出されます。

 

  • 休業(補償)給付:給付基礎日額の60%×休業日数
  • 休業特別支援金:給付基礎日額の20%×休業日数

 

 なお、休業の初日から第3日目までを待期期間といい、業務上の災害の場合にはこの期間中、事業主による労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)が行われます。

 給付の申請には休業給付支給申請書を作成し、事業所住所所轄の労働基準監督署に提出することが必要です。

 

 それぞれ申請書には事業主(企業)が証明・記入する欄があります。労災隠しや虚偽の報告は50万円以下の罰金に処される場合があるので、労働者の業務災害・通勤中のケガは正確に報告を受け、労災保険の手続きを適切に行いましょう。


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