事業計画書の書き方 その1 市場規模の考え方

2021年09月15日 / 最終更新日 : 2021年08月30日

中小企業診断士の山田盛史です。

企業経営において事業計画書を作る機会は定期的に訪れるものです。例えば、事業を立ち上げる創業段階では創業計画書を作って、金融機関に提出して創業融資を受けます。
また、出資を受ける際も事業計画書を作って出資者に対して出資を募ります。

さらに事業を立ち上げた後も融資や出資を受けるタイミングが何度か訪れ、事業計画書を作る事になります。他にも補助金を申請したいと思えば、補助金申請を目的とした事業計画書を作ります。このように企業経営をしていく上で事業計画書の作成は何度も必要になります。事業計画書は企業経営をしていく上で非常に重要なツールになります。
そこで、数回に分けて事業計画書の書き方のポイントを解説して行きます。今回は市場規模についてです。

他の事業計画書の解説記事は以下の通りです。

▼事業計画書の書き方 その2 ストーリーを組み立てる
https://will-links.jp/?p=1291

▼事業計画書の書き方 その3 事業に連動した収支計画を作る
https://will-links.jp/?p=1296

▼事業計画書の書き方 その4 目的別の事業計画書作成のポイント
https://will-links.jp/?p=1300



市場規模とは

市場規模は、行おうとする事業が狙う市場の大きさのことを指します。事業を行うにあたって、市場がどれくらいの規模を持つのか、どれくらいの成長可能性があるのかといった事を事業計画書の中で説明するのです。

なお、市場規模の重要性は事業者が置かれる状況や目指す方向性によって変わります。例えば、小規模事業者やIPOなどを狙わない中小企業など、いわゆるスモールビジネスにおいては、あまり重要ではないと個人的には思っています。なぜなら、自社が行う事業規模が大きくないため、市場の全体感を示すことに、さほど意味がないからです。

一方で、急成長させてIPOを目指すとか、社会全体に大きな影響を与えるという、いわゆるスタートアップにおいては市場規模はとても重要です。スタートアップは売上高が急拡大することを目指すので、その事業が狙っている市場規模はどれくらいで、どれくらいの成長の可能性が見込めるかを数値で示して今後の将来性をしっかり利害関係者に伝えることが重要になります。つまり市場規模をどのような考え方でどのように定義するかで成長の可能性や将来性が決まるという事です。


フェルミ推定を活用する

市場規模はフェルミ推定を使って推計することが一般的です。フェルミ推定とは、調査することが難しいような捉えどころのないものを、いくつかの事実をもとに推計して考えるという手法です。例えば、「日本に電柱は何本あるか?」など実際には調査することができないようなことを推計して考えて答えを導くという考え方です。

仮に有名なフェルミ推定の例題である「日本に電柱は何本あるか」を考えてみるとします。

道端の電柱が50平方メートル間隔で1本あると仮定します。すると100平方メートルで2本の電柱があることになります。さらに1000平方メートル(1キロメートル)では200本あることになります。

日本の国土面積は約40万平方キロメートルなので、日本全体では

40万(平方キロメートル)✕200(本)=8,000万(本)

となります。
ただし、山岳地帯には電柱がないので、仮に日本国土の半分は電柱がない地帯と仮定すると半分の4,000万(本)ではないかと推計できます。

何かの判断をする際にすべての情報が手に入り、その上で意思決定ができるということは実際にはなく、限られた情報から最適と思われる選択をしていくのが企業経営です。
そのため、フェルミ推計の考え方は経営者や経営企画、ひいてはビジネスパーソン全員にとって重要なビジネススキルになります。


市場規模の考え方

市場規模の考え方の一例は、価格、顧客数、利用頻度をもとに算出する方法です。自社の商品やサービスの価格はいくらかを決めます。そして、商品やサービスが狙うターゲット、つまり顧客は最大何名くらいいるかを考えます。さらに、商品やサービスをその顧客が何回利用するかを決めてそれらを掛けることで市場規模を推計する方法です。

市場規模は正確には調査できませんが、ある程度の予測のもとで推計して定義します。
予測といってもある程度の根拠をもとに推計することが合理的な市場規模を推計する上で重要です。それには統計数値を利用することが有用です。


統計数値を利用する

市場規模の推計には統計データを活用することが有効です。総務省の家計調査や財務省の法人企業統計調査、経済産業省の工場統計調査など、世の中には様々な統計があるので、自社のビジネスに活用できる統計を利用しましょう。

経済産業省のホームページに「役に立つ統計情報」というページがあり、主な各種統計が掲載されていますのでこちらを活用すると良いと思います。(以下URL)

https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/town_planning/machigenki/toukei.html



TAMとSAMとSOMで市場規模を定義する

TAM、SAM、SOMという考え方を使って市場規模を定義する方法も有効です。これは主にスタートアップの事業計画書を作る際に用いる方法です。
TAMとはTotal Addressable Marketの略で、提供する商品やサービスが獲得できる可能性のあるすべての市場を獲得した際に、そこから得られる売上や収益を表します。

SAMとはServiceable Available Marketの略で、TAMのうち、自社の商品やサービスが狙う特定の顧客セグメントの需要を表したもので、当該企業が当面追求すべき売上や収益になります。TAMは可能性のあるすべての顧客層での全体市場を示しますが、SAMは自社の商品やサービスの特性を考慮して、実際にアプローチできる市場規模になります。

SOMとはServiceable Obtainable Marketの略で、実際に自社が獲得できるSAMの部分を表し、短期的な売上や収益の目標になります。SAMとして設定した市場規模の中で、競合などを考慮して、自社がアプローチすることで比較的短期的に獲得できそうな市場規模になります。

TAM、SAM、SOMの関係性を図示すると以下のようになります。




まとめ

いかがでしたでしょうか。市場規模の定義にはフェルミ推定の考え方が重要になります。また、自社の商品やサービスを提供するターゲットは具体的にはどのような人なのかといったターゲッティングをしっかり行って顧客セグメントを明確にする必要もあります。

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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