下請法における「買いたたき」とは

2022年04月10日 / 最終更新日 : 2022年03月09日

中小企業の取引において関連する法律として下請法があります。下請法は中小企業や小規模事業者が一方的に不利にならないよう定められた法律といえ、中小企業の経営者は抑えておきたい法律です。今回は下請法について解説します。



そもそも下請法とは?

下請法とはその正式な名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、親事業者がその有利な立場を利用し、下請けいじめをすることを抑止するための法律です。ビジネスでの取引は基本的に対等な立場で、双方の合意に基づいて行うのが望ましいですが、現実はどうしても親事業者の方が強い立場で交渉することになりがちです。また、理不尽なクレームをつけられても、下請事業者が親事業者との関係悪化を懸念して泣き寝入りせざるを得ない状況なども発生してしまいます。そこで、親事業者が正当な理由なく、下請事業者に不利な条件を押し付けたり、支払いを遅らせたり、代金を減額できないように下請法が整備されました。

下請法違反は公正取引委員会によって取り締まられることとなります。公正取引委員会は自らの権限で調査をするほか、ホームページで通報を受け付ける窓口を設置しています。下請法の対象となる取引として、「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」の4種類が規定されています。また、この4つの取引に当てはまる場合であっても、発注主が必ずしも下請法上の「親事業者」に当たるわけではありません。発注者と受注者の資本金の差に注目し、下請法で規定された差がある場合に限り、下請法上の「親事業者」と「下請事業者」の関係となります。



「買いたたき」とは?

買いたたきについては、下請法の第4条第1項の5号に以下のように規定されています。

「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」

この「通常支払われる対価」とはなんでしょうか?同じ、あるいは類似の物やサービスに対して、下請け事業者が存在する地域において一般的に支払われる対価(いわゆる市場価格)のことを言うとされています。また、市場価格の把握が難しい場合、従前の取引における単価で計算されたものが通常の対価とされるのが原則です。



「買いたたき」と値下げ交渉はどう違うのか?

値下げ交渉の全てが「買いたたき」として下請法違反となるわけではありません。「買いたたき」に該当するか否かは、

  • 対価の決定方法(下請代金の額の決定に当たり、十分な協議が行われたか等)
  • 決定内容(差別的であるかどうか等)
  • 「通常支払われる対価」との乖離状況
  • 当該給付に必要な原材料等の価格動向等

を総合的に勘案して判断するとされています。

例えば、十分な協議も行なわず、原材料価格が高騰しているにもかかわらず、従来通りの取引価格を押し付けることは「買いたたき」に該当する可能性があります。



具体的な事例

上記の通り、下請法違反とならない値下げ交渉の範囲は抽象的な基準によるため、実務上はこれで問題ないのか不安になることも多いでしょう。公正取引委員会は下請法の運用基準をホームページで公開しており、そこには以下のようにたくさんの具体例が掲載されています。

 

〈製造委託,修理委託における違反行為事例〉
  • 5-1 大量発注を前提にした単価での少量の発注による買いたたき
  • 5-2 量産品と同単価での補給品の発注による買いたたき
  • 5-3 下請代金を据え置くことによる買いたたき
  • 5-4 一律一定率の単価引下げによる買いたたき
  • 5-5 合理性のない定期的な原価低減要請による買いたたき
  • 5-6 納品後の下請代金の決定による買いたたき
  • 5-7 短納期発注による買いたたき
  • 5-8 多頻度小口納入による買いたたき
  • 5-9 その他の買いたたき

 

〈情報成果物作成委託における違反行為事例〉
  • 5-10 一律一定率の単価引下げによる買いたたき
  • 5-11 納品後の下請代金の決定による買いたたき
  • 5-12 短納期発注による買いたたき
  • 5-13 その他の買いたたき

 

〈役務提供委託における違反行為事例〉
  • 5-14 下請代金を据え置くことによる買いたたき
  • 5-15 一律一定率の単価引下げによる買いたたき
  • 5-16 取引先の都合を理由とした買いたたき
  • 5-17 その他の買いたたき

実際の取引が紹介されている具体例に近いものであれば、該当しないように注意する必要があるでしょう。



最近の動向

公正取引委員会は令和4年の1月26日に通達を改正し、「買いたたき」の認定をしやすくしました。原油や食料品などの物価が高騰する中で、賃上げにつなげるためには不当な買いたたきを減らす必要があるからです。公正取引委員会が示す例の中では、原材料価格等の増加を対価に転嫁する必要性について協議せずに取引価格を据え置くことや、価格転嫁を認めない理由を書面・メール等で回答せずに取引価格を据え置くことは「買いたたき」に該当する可能性があるとしています。今後は「買いたたき」に対して、より厳しい目が向けられることが予想されるため、下請事業者との交渉が適正かどうか見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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