経営管理VISA(ビザ)申請における事業の継続性(債務超過があることに対する改善見通し)-1年以内の債務超過解消施策を解説

2024年01月02日 / 最終更新日 : 2024年02月23日

中小企業診断士の山田盛史です。経営管理VISA(ビザ)の取得では事業の適正性に加えて、事業の安定性や継続性が求められています。事業の継続性については、貸借対照表が債務超過の状態である場合、1年以内の債務超過の解消が求められます。本記事では、1年という短期で債務超過を解消する施策について解説します。


 

経営改善を進めて当期純利益を計上する

まず、必ず実施すべきなのが経営改善を行うことです。経営改善とは現在赤字の損益状態を改善するという事になります。赤字幅を縮小させる、また赤字から黒字に転換させます。経営改善の考え方ですが「売上ー費用=利益」になるため、売上を上げるための施策、そして費用を下げるための施策の両方を検討します。
一般的な経営改善においては、資金繰りをどうするかという論点がありますが、経営管理VISAの更新等の場合は会社の決算書は赤字で債務超過であっても、代表者個人に資力があり、金融機関からの借入金がなく、実態の資金繰りは問題ないという事業者様が多いです。

 

赤字が続いた原因を把握する

貸借対照表が債務超過という事は、赤字が続いているということに他なりません。改善を考える上では、この赤字が続いてしまった原因を把握することが重要になります。原因は経営者自身がコントロールできない外的な要因もあれば、経営者や会社内部の内的な要因もあります。経営改善を行う上では、この原因を把握し、どのように、この原因を克服して改善させるかを考えます。
その上で、売上を上げる施策、費用を下げる施策を考えます。

 

(1)売上を上げる施策

売上を上げる施策を考える上では、既存顧客(既存商品・サービス)の売上をあげる事、新規顧客(新規商品・サービス)の売上をあげる事を考えます。当然、既存顧客の売上をあげる方が、新規顧客を獲得するより、時間的・費用的にコストが掛からないため、既存顧客から売上をあげる方法を優先的に行います。
既存顧客へのクロスセル、紹介営業、休眠顧客へのアプローチなどが代表例です。

 

(2)費用を下げる施策

費用を下げる際には、経営判断で削減できるものと、削減できないものがあるので、削減できる経費を洗い出し、削減可否を検討します。なお、削減することで提供する商品やサービスの品質が低下し、顧客が離反してしまうケースがあるので注意が必要です。
例えば、ケーキ屋さんにおいて、使っている材料を現在よりも安価な材料に変更したとします。すると、コスト削減は実現するのですが、材料を変えたことでケーキの味が変わり、店の味を楽しみに買ってくれていた顧客がケーキを買わなくなってしまうことも考えられます。それであれば、ケーキの材料ではなく、包材を安いものにするなどを検討した方が良いという事になります。費用削減では、提供する商品・サービスの売り、強みを毀損しないように意識しながら考えていくことが重要になります。



 

費用削減は短期的に効果が出るが、売上拡大は時間が掛かる

費用削減は比較的短期的に削減効果が表れますが、売上拡大には時間が掛かります。販促活動を行い見込み客を発掘する、そして注文を頂き、注文を受けた商品・サービスを納品してはじめて売上が計上されます。受注生産で注文を受けてから、半年後に納品して売上が計上されるという業種の事業者様もありますので、いずれにしても売上を上げるには、ある程度の時間を要するという事になります。経営管理VISA(ビザ)の取得更新には1年以内の債務超過解消が求められるため、債務超過額が大きい場合や、赤字幅が大きい場合は当期純利益を計上し、債務超過を解消するという対策だけでは1年以内の債務超過解消が現実的に難しいケースが出てきます。
その場合には以下の対策も検討します。

 

増資による資本金の増強

当期純利益を計上するという方法以外に債務超過を解消させる方法として、増資を行い資本金を増やすという方法があります。貸借対照表の純資産(自己資本)の部は、中小企業の場合は資本金と利益剰余金という科目で構成されているケースが多いです。前述の当期純利益を計上するという施策は利益剰余金を増やすというアプローチになります。一方で、増資を行うという施策は資本金を増やすということになり、結果として純資産(自己資本)が増加し債務超過解消に寄与します。


 

役員借入金の債務免除

さらに、別の施策としては役員借入金を債務免除するという施策があります。役員借入金とは金融機関等からの借入金ではなく、法人の代表者や取締役個人が資金を法人口座に入れて事業資金に充てている場合に借入金として計上されている金額になります。代表者や取締役個人から法人が資金を借りているという状態になっているという事です。借入金なので、返済が必要な債務になる訳ですが、この役員借入金の返済を代表者や取締役が免除する事で、債務免除益という特別利益が計上されます。

経営改善を進めることで本業の利益である営業利益が増加しますが、さらに債務免除益を加えることで当期純利益が増加することになるので債務超過解消に大きく寄与します。ただ、債務免除益の注意点は、法人税が課税されるという事になります。債務免除益を計上し利益を増やすとその分、法人税の負担も増えてしまいます。そのため、債務免除益を計上する際には、繰越欠損金の金額を踏まえて、債務超過を解消しつつ、かつ税金負担が大きくならないように配慮する必要があります。実際の債務免除の際は税理士等の専門家に相談するのが良いと思います。


 

事業継続には営業利益の創出が必須

資本金の増強や債務免除による債務超過解消策を解説しましたが、これらの方法は一時的に財務内容を良くする方法に他なりません。一時的に財務内容が良くなっても、赤字が続けば、再度債務超過になってしまいます。また、資金も枯渇していくため、永続的な事業の継続はできません。結局、本業の利益である営業利益が増えなければ、事業を継続することができません。そのため、経営改善を図っていくことは必須といえます。

 

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当社では、中小企業診断士が事業の継続性に関して評価を行った評価書(債務超過があることに対する第三者評価による改善見通し書)を作成しています。経営改善の具体的なアドバイス、事業者様自身が気づかないポイントや改善案等も提案させて頂き、事業計画のブラッシュアップや戦略の向上にも活用頂いています。まずは、お気軽にご相談ください。

 

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