役職手当について、「役職手当を支給する=残業代不要」の誤解

2022年12月30日 / 最終更新日 : 2022年11月09日

役職手当を支払えば、管理監督者なので残業代支払は不要と思ってはいませんか?時間外労働と休日労働に対する割増賃金が不要な管理監督者は実態を見て判断されます。本記事では事例を交えて役職手当の考え方を説明します。




 

役職手当とは

役職手当とは、従業員の役職・役割に応じて支払われる会社任意の手当のことです。管理職手当や役付手当とも呼ばれることもありますが、共通しているのは、その役職に伴う職務内容や責任に応じた額の手当だということです。




 

役職手当の対象者について

役職手当を支給する目的は会社により様々だと思いますが、管理監督者として役職手当を支払う場合には意識しなければならないポイントがあります。それはその役職手当が他の一般社員と比較して特別な給与であり、管理監督者である者の待遇としてふさわしい賃金か否かという点です。




 

管理監督者とは

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされています。管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等についてその地位にふさわしい待遇がなされているかなどの実態によって判断されます。




 

役職手当を支給している=残業代不要という訳ではない

管理監督者は、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けないことから、「管理監督者=残業代の支払が不要な役職」と思われることが多くあります。ですが、実際は単に役職手当を支払っているから管理監督者という訳ではなく、手当の多寡のほか、職務内容や責任、権限といった実態によって判断されます。なので役職手当を支払っているから即ち残業代支払が不要という訳ではないことを留意してください。




 

管理監督者と認められない場合の一例

例えば、管理監督者として役職手当を支給しているにもかかわらず、一般社員と総賃金がさほど変わらない、総労働時間数で賃金を除算したら同等程度であるといった場合には、管理監督者として特別な給与を受けているとは言えず、管理監督者でないと判断され、時間外割増賃金(残業手当)や休日割増賃金の支払を命じられる可能性があります。




 

管理監督者をめぐる民事裁判例

民事裁判で争ったものの、管理監督者性が認められず、時間外労働もしくは休日労働に対する割増賃金支払義務があったとされた事例について、地位と手当にピックアップして列挙します。

 

マハラジャ事件:東京地裁判決H12.12.22

地位:インド料理店の店長

手当:役職手当等の管理職の地位に応じた手当が支給されたことはなかった

 

アクト事件:東京地裁判決H18.8.7

地位:飲食店のマネージャー

手当:基本給は厚遇されておらず、役職手当等の諸手当も十分とはいえなかった

 

育英舎事件:札幌地裁判決H14.4.18

地位:学習塾の営業課長

手当:給与等の待遇も一般従業員と比較してそれほど高いとはいえなかった

 

いずれも勤務様態や責任、権限有無といった賃金以外の実態も要因となり、管理監督者として認められませんでした。




 

役職手当支給の際に考えること

管理監督者とした者に役職手当を支給する場合は、手当が管理監督者の職務内容や責任、権限にふさわしいかどうかをよく考慮しましょう。また、管理監督者の場合でも深夜労働に対する割増賃金の支払は必要となりますので注意しましょう。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。
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